Little AngelPretty devil 〜ルイヒル年の差パラレル 番外編

    “禍殃かおう来たるに門を選ばず
 



          




 昔々あるところに。後世“アジア”と呼ばれる地域の東の端っこに、ユーラシア大陸の縁取りのように太平洋側へと浮かぶ、南北に細長い島国がありまして。一年を通じて四季の巡る、比較的過ごしやすいその島国は、大陸からの先進の文化文明の伝播も手伝い、地域毎のコミュニティーがそれなりの発展を見せたその末、指導者階層を中心とした自治組織も発達し。そうやって地方地方に乱立していた剛の者たちの勢力が、中央へと権力を集中させることにて統率され、一大“国家”として動き出して もうどれほどとなるものか。日進月歩の技術革新と、ますますの人民組成能力&人心掌握力の発展により、大規模な都市整備工事まで可能となった彼らが、その“中央”たる都を京に落ち着けて、はや幾年幾歳月。今帝による治世は、もしかしたなら後世の民草たちからも“歴史に残りし安寧な御世”と謳われし世代となるだろうほどに、人の勢力による大きな乱はこれといって起こらないままに過ぎており。貴族や権門、雲の上に間近い身分の方々におわしては、これも帝のお心の尊さと慈悲あふれるお導きによるものと。言うだけだったらタダだとばかり、ご大層にも褒めちぎっては、罪があるやら無いやら“ほほほのほ…”と曖昧な笑い方をして、喜び合っていたりもするのだが。そんな連中はよほどのこと肥え太っているが故の、これも一種の障害か、足元を見ないままに勝手を言って憚
はばからないのもまた、世の常のことであるらしく。

  ――― 世に人心の闇は尽きまじということだろうか。

 何の罪もない非力な人々のささやかな幸せを、意味なく他愛なく摘み取って、そのまま何とも思わぬ無慈悲な輩の、何とも多いことであるやら。そして、そんな悪さが生みし怨嗟の澱は、単なる悲しみからどんどんとその濃度を増すごとに、どんなに深き慈悲であれ相殺出来ぬほどもの代物、途轍もなく重きものへと育ってしまうのもこれまた造作の無いことであるらしく。闇の眷属が肥え太るための、それはそれは格別なる御馳走に相応しき怨念が、今日も何処かで蕾を擡
もたげる。





            ◇



 天高く、秋も深まり、各地における収穫の知らせもそろそろ落ち着いて。出仕への対価として朝廷から賜る褒賞給与のそのほかに、一応は“地主”となっている領地からも、秋の味覚が色々と、荷車に乗せられ届けられたる、毎度お馴染み“あばら家”屋敷。
「わぁあ、大きな栗だ〜。キノコも一杯だし、こっちは…黒いお豆?」
「はい、黒まめですよ?」
「煮る前はこんな真ん丸なの?」
「ええ。さっそくにも少しほど、お味見に炊きましょうね?」
「うわ〜いvv」
 本格的なお砂糖というものが日本の文化に実際にお目見えして出回り出すのは、ポルトガルやオランダから宣教師たちが往来し出した室町時代からだそうだから。この頃合いだとまだそんなにも“甘いもの”はなかったに違いなく。それでも秋の味覚の豊かさ、しかもよ〜く熟して丸々と太っていれば、詰まった滋養もたっぷりな、芋も豆も柿や梨などの果物も、不思議と甘くなるからね。幼い書生の少年が、賄いのおばさんのお話へ嬉しそうなお声を上げているのが庫裏より聞こえて、他の舎人
とねりや雑仕ぞうしたちと同様に、年若き主人のお館様までもが、くすくすと苦笑をこぼしておいでの、此処はいつも座しておられる定位置で。秋の風情を通り越し、そろそろ冬枯れの気配が始まりそうな、荒れ放題の庭を見渡せる広間の濡れ縁に。ちょっぴり所在無げな様子にて、ぼんやり手持ち無沙汰なままで腰を下ろしていらっしゃる。一応は朝晩の寒の深まりに合わせてのこと、晩秋の襲かさねの色合いも風流な、質のいい袷あわせを身にまとい。その割にはお行儀悪くも、足を崩しての御簾の外。少しは暖かな秋の陽に惹かれてのこと、濡れ縁へと直に腰を下ろし、寝不足の猫のように少々ぼんやりとして、日向ぼっこを楽しんでおられるらしかったが、

  “暇だよな〜〜〜。”

 京の都の一応は内裏のうちながら、かなり場末に辛うじて建つ、元は権門、今は名も無き元貴族のお屋敷跡に。数年ほど前から住まいし、術師の青年これありて。出所素性の怪しきままに、なのにも関わらず…帝おん自らの采配にて、大内裏の最も高き位にあたる、神祗官(補佐)という大抜擢を受けし彼こそは、その名もどこか禍々しき、蛭魔妖一とかいって。名前もそうだが姿もまたまた、当世の日本、大和の世にはあり得ぬ筈の、不思議や奇跡に多々満ちており。天照大神様をなぞらえるほどに畏れ多くも、天にまします日輪もかくやという明るさの、黄金
こがねにも似たる髪の色。してまた何と、唐渡りの玻璃の細工を思わせるような、奥深く透き通った金茶の瞳をその双眸へときりりと据え置いて。透けるような白磁の肌といい、鋭角的に尖った風貌といい、当世の流行で断ずれば、福々しき貴人たちとは全くの逆で、それはそれは浅ましくも卑しき人相となるはずが。か細くも玲瓏でありながら、なのにどこかで妖しくも強かな、ともすれば威容さえまとった存在だと来て…これまた面妖。一体どこの邪妖の生まれ損ないかと、失敬な噂さえ立つ身なれども。天文・暦に、方位学、宗教や戦略思想の基盤として発展途上の哲学に、その他の分野の知識の深さも並ではなく。それからそれから、

  ――― 表立っては“あり得ない”とされていること

 その姿も見えぬまま、人に仇なす妖かしや物怪、世に恨みの深き悪霊などなどが引き起こす悪さの数々を。実際に調伏せしめ、封殺するその咒術の手腕の確かさは、関係各位の誰に聞いても疑いようがなかったし。そんなこんなで、野放図にみせながらも要所要所をきっちり押さえている彼だけに、どんなに目に余る不埒な言動があったとて、力の限りに叩き伏すことも、はたまた失脚を狙っての策謀を巡らせても、必ずどこかで破綻を来たし、同じ咒術を持ち出せば、あっさり返り討ちに遭うと来て。何ともかんとも出来ぬまま、こんな若造に上からの物言いをされたとて、黙って屈するしかない今日このごろの権門各位であったそうな。そうしてそして、そんな評価を様々にその痩躯へと注がれておいでの、当のご本人様はといいますれば。そんな輩も風聞も、やはりちっとも怖くはないが、時間とその御身を持て余すよな“退屈”だけは困りものであるらしく。暇つぶしに出仕してみても、この時期は微妙にさしたる行事がある訳でなし。ではと言って、遠乗りするほどの気候でもなし。まだ陽は高いがいっそ不貞寝してしまおうか、いやいやせっかくの貴重な陽盛りを取り逃すのは勿体ないし…と。結局、いつもと同様にごろっちゃしているばかりのお館様である模様。

  「………っと。」

 まだまだ真冬にまでは至っておらず、真昼の陽盛りにいると、さすがにすぐにも総身が暖まる。じんわりと温もって来た心地よさから、う〜んと体を伸ばした弾み、どこの何に引っ掛かったか、こっつん・からりと何かが板の間の上へ落ちたような音がして。音がした方へと面倒そうに眸をやれば。いびつな形の翡翠石が、板の間の上、無造作に投げ出されたまんまな格好で、あっけらかんと転がっている。
「お…。」
 もう半年ほども前になるか、あれは梅雨の最中の雨続きの晩のこと。話のついで、他愛のないおねだりをして、黒の侍従から貰った根付け。本来は夜の帳を住処にする彼だから、無理から呼ばわることもないまま、傍らにいない昼日中でもその面影を偲べるように。何かないかと強請ったところ。大したものではないけれどと、彼が長らく身につけていたというこれを、手づから譲り受けたのだけれども。手持ちの銀鎖で首から下げて懐ろへ、お守りのようにして始終身につけていたものが、何の拍子か、鎖が切れて落ちてしまったらしくって。
“あーあ、だな。”
 結構頑丈だったのにな。ころんと転がったままな翡翠を拾い、そのまま切れた鎖を首から外せば。妙な途中から切れているのが見て取れて、衣紋のどこかに引っ掛かってという感じでもない。
「………。」
 さしたる根拠はないのだが、強いて言えば…何だか不吉だなと。不快な感触にむずがるように、眉を顰めたのもほんの刹那。自分でも埒のないことと苦笑半分、ゆっくりとかぶりを振りながら、何か代わりを探そうとして、濡れ縁から立ち上がったその同じ間合いにて。

  「………っ!」

 不意な突風のような勢いで。ざわざわ・がささっと、決して小さくはない音と気配が一遍に。この屋敷の中庭という、若き主人の曰わば懐ろ、一応は結界も張ってあった、最も過敏な筈の警戒範囲の範疇内へ。大人の背丈以上はあろう漆喰塗りの小高い塀を、途轍もない跳躍力にて高々と乗り越え、それはあっさり飛び込んで来た何物か。傍若無人な存在の、まずはその素早さと咒への抗性、破壊力の大きさに驚きつつも、負けてなるかと総身の感応、一気に立ち上げた蛭魔であったのだけれども。

  「………葉柱、か?」

 力任せもいいところ、前触れなしの突然さにて。不意に目の先、枯れ草入り乱れたる庭先へと、人への行儀も畏怖も知らぬ野良犬のように、見境なしの乱暴な勢いで飛び込んで来たは。数歩分ほどもの間合いがあるが、それでもまずは見間違えはしなかろう。肩まであるものを、だが結髪してはいない黒髪に、精悍な風貌、頑丈そうで屈強な上背の。自分が侍従にと使っている、蜥蜴の総帥こと式神の青年ではあるまいか。即座にそうと判りはしたが、何故だろうか、その先が続かない。他では知らないが蛭魔を相手には、ただの悪戯でもこんな種の唐突はしなかった彼だし、それより何より…様子が随分と訝
おかしいからで。どんな窮地にあったとて、不敵なまでの恐持てな態度を崩さずに。それが背中であったとて、しゃんと張った背条も頼もしいまま、不意打ちに蹴ってもおいそれとは転ばぬだろう、何とも強かな威容を保っていたものが。
“………。”
 此処からではその頬の輪郭しか見えない、その顔やらおとがいに、かなりの擦り傷が窺える。今日は漆黒のそれではない、直垂(ひたたれ)風の袴姿の衣紋にも、肩と言わず袖と言わず、黒々とした血痕が大きくこびりつき、背中や袖、脇、袴の腿あたりには、鉤のついた何か大きな刃で惨くも引き裂かれたような痕跡も生々しくて。辿り着いた先である此処から、もうもう立っていられぬらしき困憊ぶりといい、生気をごっそりと削るほどもの、見るからに重傷を負っている模様。しかもしかも、その懐ろには、蛭魔には見覚えも心当たりもない、小さな子供を抱えているらしく。
「一体 何の騒ぎだ。」
 からかうつもりは勿論のこと、咎めるつもりもないままに、何があったかを迅速に訊きたくて。見慣れた背中を見据えつつ、立ち上がりかかっていた濡れ縁から、庭へと降りかかった蛭魔だと。気配で察した辺りもおサスガ。だからこその、

  「寄るなっ!」
  「…っ。」

 空気を震わすほどもの裂帛の怒号が、質量のある堅い拳か何かの攻撃のように放たれて。大抵のものには今更怖じける筈のない、さしもの蛭魔、その人が。びくりと震えてその身を竦め、手足の動きをその場に固めたほどだったから。その威力の何とも凄まじかったことやらで。冴えた金茶の光をたたえし、切れ長の眸を大きく見開いたまま、唐突な命令へ身を凍らせていた術師の青年へ、

  「…悪りぃ。」

 続いてかけられたのは、打って変わって力の萎えた謝辞の一言。先程の怒号は、蛭魔という存在を警戒してのものではなく、むしろ、彼の身を案じての一喝だったらしくって。
「俺らがかぶっちまったのは、人間では耐えられぬだろう種の呪咒なのでな。」
 怪我を負っただけじゃあない。その身を蝕むほどの、瘴気による汚染も受けていること、包み隠さず伝えた葉柱であり、
「…俺が誰だか判っていてもか?」
 問われたすぐさまという間合いでの、顎を引いての肯定は、蛭魔を謗
そしるその前に、無力な自分をもあっさりと認めた敗北宣言でもあって、
「悪いついでに、進に言って陰の結界を張ってもらえぬか。」
 彼がその懐ろへと抱えているのは、どうやら同族の小さな子供であるらしく。どこかで異種の邪妖の聖域にうっかりと踏み込んでしまったところが、これまた間の悪いことには、丁度 誰ぞに呼ばれての、呪いの魔物の迷い出ておりし最中で。召喚したる張本人、一応は術師の端くれであったらしいが、陰界負界の生き物を、呼べは出来ても調伏制御の出来る者ではなかったか。闇雲に怒らせただけであっさりと餌に消えたというから、まま、それはそれなりに哀れな話ではあったものの。それでは充足を得られずに、暴走した魔物の牙の矛先が、そのままこっちへ向いても唸り出し。あわやというところで…小さき仲間の悲鳴を聞きつけた葉柱が、ぎりぎり間に合い、飛び出してったらしくって。
『人の怨恨が膨らませ、毒爪を持たせた、ムカデの変化
へんげであったようだが。』
 つやの出た甲殻も硬き、黒鋼のような胴が幾つも幾つも、鎧の重なりを思わせるような節で連なった長虫
へびもかくやと長々とした姿を穹へと振り立てていて。青々とした竹やぶの中、こっそりと組まれた祈祷の祭壇やいかにもな咒陣をあっさり蹴散らし、一応の手順で並べられし御弊や笹や樒しきみを物ともせずに、そりゃあもうもう大暴れ。あまりの迫力に飲まれてか、まだまだ年端の行かぬ小さなトカゲっ子が、腰を抜かして怯えていると。天空の高みからようやく気づいた邪妖めが、槍の襖もかくあらん、体の両脇にずらりと居並ぶ毒の爪、じゃきりと煽って切っ先を揃え、落下加速も加わっての疾風怒涛の勢いにて、そのまま千々に引き裂こうとした、正にその時。
『…っっ!』
 相手の突進とは紙一重もあったかどうかの間一髪。小さな仲間を両腕でしっかと抱え上げ、何とか身を躱しての奪還には成功したが、何せ相手が大きい大きい。しかも、よほどにアクの強い怨念を練られて練られて呼ばれた存在だったか。存在周辺の空気にまでも、ただごとではない濃度の瘴気があふれていたから。間断無くも振り下ろされる、鎌のような毒爪を、闇の刀で丁々発止と避ける内にも。瘴気の方をその身へさんざん浴びてしまい。何とか本体こそは振り切って逃げて来たものの、二人揃ってかなりの消耗に至り、この近所にてとうとう力尽きた…という顛末は、後日に聞いたる詳細で。

  「………。」

 突然なだれ込まれたばかりの、今の今におかれては…あまりに材料が少なすぎ、何が何やら、さっぱりと状況は見えなくて。壮絶な容体である彼らだということと、ただの人間に過ぎない蛭魔が不用意に触れては危険であるらしいということしか判らぬまま。それでも…何をどう優先すべきか、合理的な判断を素早く下すための、解析力と決断力は鈍っておらなんだお館様。
「…判った。」
 言葉少なな言いようへ、だからこその緊急と察し、
「ちびっ、此処へ来いっ!」
 庫裏の側へと顔を向け、書生の瀬那をまずはと呼んだ。お呼びですかと、何も知らぬままに現れた彼に、何でも良いから進を呼べと急っついて。現れいでたる武神の彼へ、状況を説明しようとしたならば、

  「…話はあらかた聞いていた。」

 セナの守護である彼は、姿を消していても邸内のどこかに意識があるらしく。この突然の騒ぎへも、セナへの脅威になりはすまいかとの思いから、その注意を寄せていたのだそうで。
「まずはこの庭一帯に結界を張る。主
あるじ、蛭魔、御簾の向こうへ。」
 着物の袖も袴の裾も、動きやすさを優先して、その身に添うようにと絞られし、少し変わった装束をまとったその上へ。手の甲から肘までを覆う籠手と、肩から回され、胸元を斜めに降りて、剣を提げたる腰のベルトまで。胴当て代わりに急所をカバーしているという、略式ながらも黒く重厚な革の武装をまとい、装備も本人の貫禄も重々頼もしき憑神の進は、

  《 ………吽っっ!》

 両手両腕を素早く払うと、中空に幾つかの印を切って見せ。そのまま障壁封印の咒を放つ。能力者でないと分からぬ気配、能力者ならば肌に気配が痛いほど届く、強力な結界の波動があっと言う間に広がって。
「………。」
 そろりと御簾の裾を掻き分けて、問題の辺りを覗き見やれば。心なしか安堵したのか、肩の堅さが少しは萎えた、大きな背中が草間に見える。時折、抱えている子供をあやしてでもいるのだろう。首が傾き、頬の線が覗く。だが、それ以上はずっと見えないままであり、
「…っ。」
 もうこれで、大事はなかろうと感じた蛭魔が、てきぱきと御簾を掻き上げようとしかかったのだが。それへとすかさず掛けられのが、

  「待て。」

 重みのある憑神の一言だった。
「何だ。」
「御簾を上げてはならぬ。」
 どんな時でも例外なく、誰ぞからの命令を聞いた試しのない蛭魔だったから。今度こそは“知るか”と無視して、たらんと下がった薄い垂れ幕、片手にからげて引き上げようとしたものの、どういう加減か…これが動かない。
「何をしやがった。」
「お前も見ていただろう。結界を張った。」
「だから…っ。」
 それがどうした、それ以上の何も頼んだ覚えはないし、そもそもお前から命令される筋合いはないと。口許へ牙を剥きかねない勢いにて、いつもの強気で押し通そうとしかかった蛭魔だったものの、

  「追っ手の魔物が瘴気を辿って現れるやも知れぬぞ。」
  「…っ。」

 葉柱がどうして結界を張らせたか。疲弊し切った自分たちの身を守るためだけじゃあない。自分たちを“こちら側”全てから切り離し、邪妖からも追わせぬようにした。まずは毒素の清めをし、それから治癒・回復というほどに、時間と手間のかかる難儀な容体になっていた彼らだというのに。外界からの完全遮蔽などという力技でもって封印されたなら、大地や大気からの精気の補給は適わなくなるから。応戦する余裕がない…どころか、助かるかさえ危うくなるのに。彼が…葉柱が望んだのはそんな危険な封印であり、

  ――― だから?

  「判るな? 蛭魔。」

  ――― 何が?

  「お前がこの敷地空間内で苦戦苦衷にあったれば、
   葉柱もまた、邪祓と治癒という行為に専念出来ぬ。」

 何物かが現れても手出しはするな。危険というなら俺がどこぞまで連れ出して叩きのめしての始末をしてやる。

  ――― だから…。


   「お前はそこからそれ以上は、庭にも結界にも近づくな。」








 *唐突な奴ですいません。

TOPNEXT→***